2017年 11月 01日
きみもお風呂に入らないかい |
弾丸で東京に家の契約に。夜行バスに乗って、くろい山々を越える。
仲介会社の方の車で、国立へ。今度住む町は、あまり知らない町で、どんなところか見たいというと、ぐるりと案内してくれる。桜並木が有名なのだそうで、その木々の一列にべつの季節を思う。山口百恵が住んでるそうですよ、きっと、キノクニヤで高いチーズを買ってるんでしょうねぇ、
目当ての家は、家主の敷地の中にあるハナレで、鉄の門をひらくと、うっそうとした木々に、ぽつりぽつりと電灯がある。土の匂いのする道をぬけると、それはあり、家のまえにはヤシの木が2本。和室がふたつ、エアコンもふたつ。木造。風呂場は土壁、トイレはタイル張り。庭には柿の木。物干しざおの錆び。はな壺に南天。家賃は今までのところよりも高いのだけれど、きっとここにするだろうと思っている、
家主は美智子さまに似ている。柿を好きなだけ取りなさいとハサミを手渡される。膨らんだ実の数かず。切って、手に落としていく。重みがふくらむ。橙黒い実は堕ちて、甘く腐っている、
ここにします、と言い、ハサミを返す。庭は好きに使っていい、野菜なんてあれば、いいんだけどねぇ。家主に挨拶し、クルマに乗り込む。のどかな場所を抜けると、学生街がたち現れ、つづいて住宅の棟々を抜ける、一室。契約の、情報量の多さに、必要なものがアタマにとどかない、
気づけば作業は終わっている。柿の実を贈る。
練馬区立美術館にいき、麻田浩を観る。とことん死にたいひとだったんだなぁと思う。すべての作品は平面で、奥行きのない。別世界の一部を描いているようで、いまある世界をはがしたら見える、裏側の一部のような。この世界の筋肉のような。死にたいです、死にたいです、とひとつずつの作品が言っているような気がして、ちょっと疲れてしまった。そういうひとにしか描けない美しさは、あるのだけど。
略歴をぼんやり見ていて「自死」という文字をみつけ、あぁ、そっかぁ、
すこし時間があまっていたし、たのしい気持になりたいので、新宿2丁目「オカマルト」へ。ドラァグクイーンのマーガレットさんがされているお店で、ゲイ関係のめずらしい本がたくさんあるお店とのこと。ずっと気になっていた。2丁目は、独特の雰囲気があり、被差別部落に見る、やけに整然とした感じに通じる。40代ほどの男性が行ったりもどったり行ったりを繰り返し、わたしの前にある自販機で何を買うでなく立ち止まる。別のみちへ抜け、店にはいる、
店内には高橋睦夫や書肆山田の本がある。マーガレットさんは文学や美術に通じている方で、とてもたのしかった。ちょうど東郷健の肉筆など飾っており、加古川から明石のながれで、じぶんのことなどをはなす。同席していた方ともたのしくはなせてよかった。まさか2丁目で、ゲイバーで、というか、「飲み屋」で、倉橋由美子や稲垣足穂のはなしができるとは思っていなかった。日曜に手伝ってもらってるひとがいて、そのひとはじぶんがむかし、明石にいて、鬱屈としていたときに手を伸ばした映画の監督だということも知る。
夜のバスに乗り、早朝三宮につく。阪急三宮で朝マックをしようと思い、セットにはポテトがついてるものだと思っていたけれど、「ちがう」と言われたことに動揺し、アタマがまわらず、コンビをたのんだら、それにも「ポテトはついてない」と清算直前で知り、いちばん安いもの、その塩分と肉、コーヒーに落ち着く。
家にかえり、朝の湯船につかる。どこにいたって、お風呂が一番いい。いつかは東京のお風呂に入っている。結局ポテトは食ってない、
by uncowakigerecords
| 2017-11-01 12:00
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